論文へのコメントが投稿される Pubpeer と pubpeer エクステンション

 

 出版がすでにされている論文の評価はどういったものだろうか、他の人はどう読んでいるのだろうか、出版後にその論文に疑義が生じたりしていないだろうか…こういったことを思うことは多いと思います。

 すでに出版された論文について多くの議論が行われるプラットフォームと、その状況を簡単に教えてくれる Chrome エクステンションを紹介します。

 

 

PubPeerとは

 PubPeer は、科学研究の論文に対するポストパブリケーションピアレビュー(出版後の査読)を行うためのオンラインプラットフォームです。

 簡単に言うと、出版された論文を題材に、さまざまなディスカッションができるようにしてある掲示板の様なものです。

 このプラットフォームでは、既に出版された論文に対して、科学者たちが匿名で評価やコメントを行うことができます。これにより、科学的な議論が活発化し、研究の透明性と再現性が向上します。

 ポストパブリケーションピアレビューは、科学研究の品質を確保するために、非常に重要な役割を果たすようになってきています。一般的に、論文が出版される前にはピアレビューが行われますが、出版後にもその論文が持続的に評価されることで、研究の信頼性が維持されます。また、新たな視点や意見が提供されることで、科学的な知識の深化にも寄与します。

 新たな反論論文や検証論文が書かれることで学説が深化するなどの学術的な進展がある、というのがいままでの伝統的なスタイルでしたが、ポストパブリケーションピアレビューでは、もう少し気楽にコメントやディスカッションができるため、非常にスピーディーかつ、多角的な視点からの検討がなされています。

 

 

PubPeerの「実績」

 PubPeer での活動は、科学研究の品質向上に大きく貢献しています。具体的には、PubPeer上での議論により、研究に新たな視点などが加わったり、引用すべきあらたな論文がみつかったりといったコネクションができることもあります。

 実際には社会問題ともなるこのテーマも外せません。論文中のデータの捏造、改竄、データや文章の盗用が指摘されることがしばしばあるということです。これらの不正行為は、科学研究の信頼性を損なうものであり、その早期発見と是正が求められます。

 その一例として、2014年春に日本で大きな問題となった小保方晴子の「STAPネイチャー」論文が挙げられます。この論文は、2014年1月29日の出版直後から PubPeer で議論が始まりました。そして、数日後にはデータの異常が指摘され、その後の調査により論文の撤回につながる事態となりました。このように、PubPeer は科学研究の品質保証において重要な役割を果たしています。

 

 

 

不正は必ずある、エラーや疑義も見つかる

 この記事を書いている日にもこんなニュースがありました。

国循理事長監修の論文で不正の疑い、第三者委員会で調査へ…画像使いまわしなど指摘(読売新聞)

 

 記事中にこのような記載がありますが、

…論文の疑義を投稿する外部のウェブサイトに6月…、

 これが Pubpeer ですね。

 Pubpeer の様々なスレッドをみているとわかりますが、本当に多くのエラーや疑義、そして不正疑惑があることがわかります。過度な疑いは健全ではないでしょうけれど、科学研究も人のなせるわざであり、必ずしも正しく綺麗なものだけではありません。

 そういったものも多くの目で見つけていくこと、しっかり評価していくこと、悪貨を駆逐していくことはとても重要でしょう。

 

 

PubPeer の Chrome 拡張機能

 PubPeerは、その機能をさらに拡張するための Chrome 拡張機能も提供しています。

 

 

 この拡張機能をインストールすると、ブラウザ上で論文を閲覧している際に、その論文に対する PubPeer 上のコメントが存在する場合に通知が表示されます。これにより、ユーザーは PubPeer を頻繁に訪れたり検索したりすることなく、関心のある論文に対する最新の評価やコメントを確認することができます。

 この Chrome 拡張機能は、PubPeerのコメントを表示する非常に軽量なものでPubPeerの機能を活用することができます。

 この拡張機能はPubMedやその他のジャーナルとは無関係であり、その使用は完全にユーザーの自由ではあります。

 

エクステンションをいれると論文閲覧中にウィンドウの上に
緑色のバーでコメントがあることを通知してくれる。

 

 PubPeer とその Chrome 拡張機能についてのごく簡単な紹介でした。科学研究の透明性と再現性を向上させるためのツールとして、ぜひ活用してみてください。